【下剋上】入社2年のプログラマが社員研修「コンセンサスゲーム」の講師をした話

勉強

今回は僕のキャリア(ってほど大した話じゃないですが)的な話になります。

先日、会社の社員総会の設営役と、コミュニケーション研修として『コンセンサスゲーム』というレクリエーションの講師をすることになったので、ゲームの概要の説明と、講師になった経緯やら感想やら反省やらを綴ります。

僕は新卒で入社してちょうど2年の今の会社で、社員総会の司会および、社員総会のレクリエーションで『コンセンサスゲーム』というグループワークの講師をすることになりました。

僕は常駐プログラマー。会社も常駐派遣がメインの中小IT企業で、実力よりも経験年数がものを言う社会です。3年目になりたての僕には、地位も役職もなければ発言権もありません。

一般的にプログラマーという職業は、コミュニケーション能力に長けていない人が多いです。必須スキルでもなければ、業務の中で磨かれることもあまりないからです。特にうちの会社には、営業職やSE職もほとんどいません。さらには社員総会以外に、全社員が一堂に会することはほとんどない。そんなコミュニケーションと隔絶された生活のなか、会社で行うコミュニケーション研修というんだから、有意義でなくてはいけません。

これらの条件を踏まえて、社員総会の司会として僕が選んだのは、「僕自身が研修の講師をやる」という大胆なものでした。

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【経緯】なぜ僕が研修の講師を?

さて、ではどうして入社2年、営業経験もなければコミュ力が高いわけでもないプログラマーの僕が、こんな面倒な研修の講師をやることになったのか。

実を言うと、経緯は簡潔です。

 

やりたかったので、勝手にやりました。

 

すみません、端折りすぎました。そもそもなんで僕が社員総会の司会になったのかから、コンセンサスゲームの講師をやることになった経緯を、順を追って書いていきたいと思います。

① 推薦で仕方なく司会になる

うちの会社の社員総会の司会は、毎年社員の中から3人選出されるんですが、前任の指名制で拒否権は(ほぼ)ありません。司会の仕事は、事前にスケジュールや台本決めや席順決めなどから、部署の事業報告やレクリエーションのスライド準備をするところから、当日の会場準備と司会進行、片付けまでなにもかもやらなければいけません。しかも準備期間は全て無給です。どういうこっちゃ。

そして僕は運良く、平成最後の社員総会の司会を務める運びとなったわけです。普段の行いのおかげですかね。うう〜内心やりたくない。

しかし指名されたらやらざるを得ません。やるからには、例年マンネリ化してグダッとした流れを変えてやろう。貴重な時間を使ってタダ働きするんだから、自分の成長に繋げてやろう。そう心に決めて司会を務めることにしました。

② セミナーを誰かやるか問題

社員総会を開催する目的は、各部署の事業報告を全社員に共有するというのが一番ですが、もう一つ、全社員で研修(セミナー)を受けるというのもメインイベントになっています。

例年、適当に外部講師を呼んでコミュニケーションについてセミナーをしてもらったり、外部取締役(ほぼ身内)のイイ話を聞いたりする受動的なセミナーが行われていましたが、あまり興味を引き立てない・有益ではない内容なことが多く、毎年不満がでているそうでした。

③ コミュニケーション研修の講師に立候補

お金を払って誰かを呼んでも文句が出る。
プログラマーにはコミュニケーション力を磨くチャンスが少ない。

ん?ということは、自分が無料で講師として自社のニーズに合うような研修をしたら、会社に損はないし、自分の経験にもなるし、自分も評価が上がる(かも)!オトクだ!?
というぶっ飛んだ結論に至りました。

とはいえ僕はスピーチ経験は皆無です。人前で話すのが嫌だからエンジニアになったくらいなので、自信は全然ありません。しかし入社2年という時期は、良くも悪くも「何をやっても許される」時期だと思います。挑戦して成功すれば評価されるし、失敗しても「まだ経験浅いから…」と許されたりします。

と、いうことで他の運営メンバーの意向はそっちのけで、「僕が講師やります」と宣言しました。意識たけえー!僕。

しかし、なんのお題もビジョンもなく講師を立候補したわけではありません。僕が実際にやったことがあって、楽しいと思ったグループワークが、『コンセンサスゲーム』というコミュニケーションゲームだったのでした。そしてこのゲームであれば僕はほとんど喋らなくていいし、暇な人も作り出しません。

設営メンバー内でリハーサルをしてみて、僕でもなんとか出来そう!という見込みが立ったので、スライドと台本も作りました。

コンセンサスゲームって?

コンセンサスゲームをざっくり簡単に説明すると、「複数人でピンチな状況に陥ったときに冷静に決断ができるか」という趣旨なのですが、最終的に協調性や計画性、時間管理能力などが問われるグループワークです。

総合的にビジネスに必須のコミュニケーションスキルが試され、磨かれるので、大企業の研修や採用面接、大学の講義などで行われるほど。
なのでスケジュールには、「コミュニケーション研修(担当:設営)」とだけ記載し、当日までゲームの名前は伏せておきました(このゲームの性質上、事前知識があると面白さが半減するので)。

研修の時間配分

ゲーム全体は流れはこんな感じです。

  1. ゲームの説明(5分)
  2. お題とアイテムを読み上げ(5分)
  3. 個人ワーク(10分)
  4. グループワーク(15分)
  5. 全体共有(20分)
  6. 答えと解説(5分)
  7. 振り返り(5分)

全体で1時間弱。講師と言っても僕がしゃべる時間はそこまで多くなく、個人ワークやグループワークなど、受講者が主体となって進みます。

ちなみに、今回は概ね時間どおりに進みましたが、チームごとに発表する全体共有の時間は想定の2倍くらい時間がかかったので、もしまたやる機会があったらこの部分を多めに確保しておこうと思います。

コンセンサスゲームのお題(設問)は数種類あって、砂漠で遭難、月で遭難、雪山で遭難など、いずれも絶体絶命な状況にチームで陥るというテーマになってます。
今回僕は「砂漠で遭難」を選びました。月よりも雪山よりも、会社の仲間と行く可能性が少しでもあると思ったからです。

さて、ここからはゲーム中に僕が説明した内容を主にまとめていきます。

【研修】コンセンサスゲーム・砂漠で遭難

社員総会は順調に進み、レクリエーションの時間になりました。僕は司会者席から立ち上がって登壇し、簡単に挨拶をし、スライドを使ってコンセンサスゲームをはじめました。

このとき、設営メンバー以外は誰も僕が登壇することを知りませんでした。
実をいうと僕、この社員総会の3週間前に退職の意を上司に表明していました。笑
退職の云々についてはまたいずれ綴るとして、そのことを知っていた上層部は、「入社2年の 近いうちに辞める奴が 偉そうに登壇して コミュニケーション研修をする」んですから、さぞ困惑したものと思います。

そんな一寸先は闇な状況での僕の初登壇。色んな意味で手が震えます(笑)

ステップ①:事前の説明

さて、ここからは僕が実際にレクリエーションで使ったスライドの内容を抜粋してお送りします。

このゲームの流れ

いまから、みなさんには窮地に陥っていただきます

  1. ひとりで打開策を考える
  2. グループで話し合って打開策を練る
  3. 各グループの答えを共有

どのグループがより窮地から脱する力があるでしょうか?

さわりはこんな感じのスライドにしておきました。そんなに堅い内容じゃないですよーという前置きをして、簡単に流れを説明します。
続いて、ルールを説明します。

ルール

  • 与えられた時間内で答えを出す
  • 理由も一緒に考える
  • ゲームについて知っていても教えない

ゲームと言っても、これは研修の一環です。
自由にグループで話し合ってもらって構わないんだけど、グループワークということは意識してもらいたい。

ということで、堅すぎず、かつ研修っぽくなるように、簡単なルールを設けてみました。レクリエーションでいきなり3年目が登壇して、「ゲームをやります!」と偉そうにルール説明するので、受講者はちょっと困惑気味ですが、僕は動じません。

ステップ②:設問とアイテムの発表

「コンセンサスゲーム 砂漠」とネット上で検索してみると、設問のサンプルが出てくると思います。
最初の出典がどこなのかイマイチ分かりませんが、出回ってるものだと文章が分かりづらかったり、イメージしづらい表現があったりしたので、僕なりにレクリエーション用に校正したものを作って読み上げました。

コンセンサスゲーム『砂漠で遭難』

(絵・いらすとや)

 みなさんは、社員旅行でアメリカ・ラスベガスに来ました。この日は、モハーベ砂漠の空中周遊ツアーに参加します。

 7月中旬の午前10時ごろ、みなさんが乗ったプロペラ機は突然のエンジントラブルにより、砂漠の真ん中に不時着しました。これにより乗っていた飛行機は大破炎上し、操縦士と副操縦士は亡くなりました。ですが、みなさんは奇跡的に無事でした。不時着は突然のことで、救援信号も、現在位置の交信をする時間もありませんでした。不時着する直前に、操縦士は飛行プランのコースから大きく離れていることと、最も近い街が約 110km 南南西にあることを告げていました。

 この付近は、平らでサボテンが生えている他は不毛の地域です。朝の天気予報では「最高気温は43℃になる」とのこと。それは地表近くでは、実に約70℃になるという事を意味しています。みなさんは半袖シャツ・ズボン・靴下・スニーカーという軽装で、ハンカチとサングラス、わずかの小銭しか持っていませんでした。

 しかし飛行機が燃えてしまう前に、みなさんは12のアイテムをなんとか取り出すことができました。次の12のアイテムを、あなたが生き残るために最も重要と思われるものから順に、1から12まで順位をつけてください。

理由は後述しますが、設問を発表するときのスライドはそれっぽいイラストのみ表示しておき、内容は口頭で読み上げるだけとしました。

続いて、12のアイテムを読み上げます。

12のアイテム

  • 懐中電灯
  • 食塩
  • この地域の航空写真
  • 1人1リットルの水
  • ビニール傘
  • 本「砂漠の食用動物」
  • 方位磁石
  • 1人1着の軽装コート
  • 45口径のピストルと弾薬
  • 化粧用の鏡
  • 赤と白のパラシュート
  • 約2リットルのウォッカ

12のアイテムも口頭で言うだけにしようかと思いましたが、メモ帳を持ってきてない人(社員総会にメモ持ってこないとか言語道断ですけど)もいることを見越し、枠線付きのアイテムのリストを配りました。

設問のとおり、これを並び替えるだけの簡単なゲームです。

ステップ③個人ワーク、グループワーク、全体共有

このゲームは、特にグループでの協調性や決断力が問われるんですが、グループでの話し合いをする前にかならず自分の意見を確立しておく必要があります。個人ワークでは、設問のメモを取らなかったせいでちゃんと覚えてない、誰かが決めてくれるだろうから自分は寝る、なんて人にとってはとても無為な時間になります。こんな人はグループワークも無為な時間になり、グループの役にも立たないことでしょう。

自分なりの意見と理由を考えるための時間として、僕は10分設けました。講師によっては5分だったり、全く時間を取らなかったりするみたいです。

それから、グループワーク。要するに共有タイムです。4〜5人の役職も年代も混在したグループ分けで、15分間で「答え(アイテムの1から12番目までの順位)と理由」を話し合って考えてもらいます。僕はとても優しいので、アイテムのイラスト入りの12枚セットのカードを全グループに配布し、話し合いやすいようにしてみました。

10分の個人ワークでは、時間が多すぎると言わんばかりに手持ち無沙汰な感じにしている人が多かったんですが、グループワークはなかなか話し合いが白熱しているようで、15分たって時間切れを告げても、なかなか話し合いが終わりませんでした。

しかしどんなに途中でも時間は決まっているので、次のステップ、「全体共有」に移ります。全体共有は、グループワークで話し合った結果を、代表者が簡単に発表するフェーズです。

話し合いの結果と理由を聞くのは非常に面白いです。裏をかきすぎて現実的ではないようなのもありましたが、そこまで考えるのか〜!とこちらも勉強になりました。

ステップ④答えと解説の発表

グループワークと全体共有が終わったら、再び僕の講師タイムに戻ります。ここからはゲームの解説と、このレクリエーションの本当の意義の解説をしていきます。

まず、「起承転結」の「転」と言わんばかりに、僕が唐突に「実は…このゲームには答えがあるんです!」と告げ、解説にうつります。そう、12のアイテムの順番には答えがあるんです。

このゲームはもともとNASAが社員研修用に開発した「NASAゲーム」に由来しているそうなんです。専門家による分析によって、ピンチの状況で最も生存の可能性が上がる12のアイテムの順番がすでに決まっています。

「砂漠で遭難」の模範解答

  1. 化粧用の鏡・・・鏡はかなり遠距離まで光が届き、捜索隊への信号になる
  2. 軽装コート・・・太陽光線を浴びないようにする。夜の寒さよけにも
  3. 1人1リットルの水・・・生存には不可欠だが、救助を待つのが前提
  4. 懐中電灯・・・夜の救助に光を使ってしらせる
  5. 赤と白のパラシュート・・・広げると空からの目印になる
  6. ビニール傘・・・砂嵐から身を守るため
  7. ピストル・・・拳銃の音で知らせるため。動物に襲われそうになったら射殺する
  8. 方位磁石・・・町に向かう用。捜索隊に早期発見されるためには役に立たない
  9. この地域の航空写真・・・砂漠は目印がなく、現在地の特定が難しい
  10. 本「砂漠の食用動物」・・・動物を捕まえると体力を消耗する
  11. 約2リットルのウォッカ・・・余計に喉が渇き、脱水症状になる
  12. 食塩・・・塩を摂取すると血液濃度があがる。喉が渇き、脱水症状を促進してしまう

ほとんどのグループが水と塩を1位・2位にしていましたが、なんと塩は最下位。会場からは「えー!!」というどよめきが起きました。しかし専門家の研究の結果と言われると、確かに反論できません。

このゲームで一番のポイントになるのは、「グループでの方針決定がいかに早くできたか」です。コンセンサスゲームという名の通り、最終的な目的はグループ内での「コンセンサス(=同意)」がいかに円滑・正確に取れたかが試されるものです。

これにはいろいろな要素が必要で、

  • 「街まで歩くのか、助けを待つか」という行動方針が決められたか
  • 進行、タイムキーパー、書記、発表など、役割分担ができたか
  • 時間内に、1~12品目の順番と理由という成果がきちんと納められたか

など。どれも、複数人で協力して成果を出すビジネスの場面で必要不可欠なことと同じです。

特に、集団の意思決定に役割分担は不可欠です。

  • 個々の意見だしを取りまとめるリーダー
  • 答えと理由を記録する書記
  • 時間内に意見をまとめるためのタイムキーパー
  • 簡潔に決まったことをスピーチする発表者

採用面接でやるグループワークでは当たり前のように役割分担すると思いますが、うちの会社にはこれをきちんと決めて話し合いを開始できたグループはほぼありませんでした。目先のタスクを解消するのに日々追われている証拠ではないでしょうか(辛辣)。

僕が学んだこと、反省点

社員総会の司会自体が経験になりました。集団を束ねる力や、進行の言葉遣い・イレギュラー時の冷静な対応の仕方など、教わらずとも備わったものが大きかったように思います。

教わったことといえば、本番直前のこと。スライドも台本も完成して、あとは喋るだけというタイミングで、運良く講師経験が豊富な方にアドバイスをいただくことができました。

「はじめての講師、何を心がければいいでしょうか!?」と訊いたところ、『自分が話す内容をスライドに載せすぎ』と指摘を受けました。そして、やはり『自信を持って胸を張って話すことが一番大事』とのことでした。

完成したスライドには、設問や12のアイテム、解説を一言一句書いてありました。人は書いてないことは頑張って聞き取ろうとするので、文章は消して、タイトルと画像だけにしても大丈夫と言われました。読む内容はスピーカーノートに書いておけば、発表者にだけ表示することもできます。確かにTEDとかで見るスピーチで、スライドに読むことを全部書いてある人はいません。

アドバイスの甲斐あって、スライドを大幅修正し台本もある程度まで削り、あとは伝えたいことをイメージして話したところ、自信を持ってアドリブなんかも交えながら話せました。台本丸読みだったら、逆に緊張しちゃってただろうなぁ!

しかし終わってみたあとの反省として、色んな人から「よかったよ〜!」と言ってもらえたものの、評価には全く反映されませんでした。なぜって?

3週間前に退職する旨を伝えていたからです(笑)

…ちなみに、そのせいでその日にもらった決算賞与は、同じ現場の同期より2割低かったです。はは!

受講者の反応

受講者には、何人かに直接感想を聞いたり、全社員のメーリングリストにアンケートの依頼をしたりして反応を伺いました。

「レクリエーションが全員が参加できる企画でよかった」

「グループワークは新しい取り組みで、良いと思った」

「スライドがきれいで見やすかった」

など、比較的ポジティブな反応が大多数でした。嬉しいですねぇ〜!

でもホンネを言うと、僕が勇気を出して講師をしたことに対する感想や激励や、普段やらないグループワークをやってみての感想が欲しかったのですが、自分たちが参加したにも関わらず客観的で表面的な意見しか引き出せなかったのは残念でしたが。

極論、セミナーっていうのは聞き手がいてはじめて成立するし、良くも悪くも聞き手次第です。どんなに腕のいい講師に話をしてもらったとて、聞き手が悪ければ誰も何も得ないと思います。そんな人には「聞き方セミナー」とかあってもいいんじゃないかな?笑

さいごに

自分が人前で話をするチャンスって、大人になると本当に少なくなります。営業職とかならまだしも、エンジニアはなおさらです。

そんななか、コミュニケーション研修の講師をするチャンスがやってきた(作り出したんですけどねw)のは幸運でした。何事も一回やってみること。これに尽きる!

ビジネス書風に言うと「新人よ、コンフォートゾーンを抜け出せるのは今だけだ」とかです。イタイと感じるかナルホド〜と感じるかはあなた次第ですけどね!