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【ベトナム】入国したら 5分でスラれた怖い話

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AVのタイトルみたいだけど、大真面目な記事だよ。

大学2年生の夏に初めての海外旅行を敢行した。シンガポールを格安航空券と格安ホテルで存分に楽しんじゃおうというプラン。
格安航空券の代償として課せられたのは、ベトナムでの乗り継ぎ時間だった。ベトナムの地を踏んだ瞬間から、恐怖の10時間は始まった・・・

ベトナム経由の格安航空券を買う

バイト先で知り合った大学の後輩=タク(仮称)と、バイト終わりにすき家で夕飯を食べていたら、「一緒にシンガポール行きませんか?」という話題になった。
チーズ牛丼を食べながら、将来の夢やら今後の経済の話をしていたらすっかり意気投合し、いつの間にか知り合って1カ月も経ってない後輩に海外旅行に誘われていたのだ。

信じられない話ではあるけど、確かにタクは経験と知識に労力をいとわない性格で、好奇心旺盛な企業家精神のある人物だった。現在進行形でグングン成長しているシンガポールは、いろんな国籍の人がいるのに治安が良くて、初めての海外旅行にぴったりなんだとか。
当時の僕もすんなりと受け止め、「よし、じゃあ行こう」と二つ返事で決まった。

大学2年生、時間は有り余るほどあったし、お金はバイトで粛々と貯めた分でなんとかなる。
それからは、パスポートの取得から航空券の予約、旅の計画までトントン拍子で進んだ。

ただ、格安航空券には落とし穴がある。トランジット(乗り継ぎ)が発生する場合があるのだ。ヨーロッパに向かうのにロシアを経由したり、オーストラリアに向かうのに中国を経由したりと、ひと手間加わることによって直行便より格段に安くなるというワザ。
そして今回はシンガポールに向かうのに、ベトナム・ホーチミンを経由するルートになった。

乗り継ぎによって時間はかかるけど、安くなるうえに2つの国に入国して観光できる、というのは人によってメリットに感じられる。
ラッキー!!と、僕らもポジティブに、ベトナムを満喫することにした。

そして旅行当日。僕とタクは、シンガポールへの経由地、ベトナムのホー・チ・ミンに降り立った。
空には星もなく真っ暗で、空気はどんよりとして暑く、湿度が高く気分のすぐれない夜だった。

タンソンニャット国際空港に着く

ベトナムへ入国するときが来た。入国審査の列に並んでるとき、タクがスマホで入国審査場の写真を撮っていた。
「ダメだよ、ここで撮っちゃ。書いてあるじゃん」と僕が言うと、後ろから警備員が怒鳴ってきた。あーあ、言わんこっちゃない。

「ノー!!ノーフラッシュ!!」

そっちかよ!写真はいいのかよ。(ダメです)

入国審査はスムーズに通った。
預け荷物はシンガポールで受け取れるようにして、ホーチミンでは肩掛けカバンだけ、さらに言うと空港内で寝泊まりして朝を迎えるつもりだった。
”空港で寝泊まり”はよくあることだと思っていたし、国際線のターミナルなんだからなんでもあるだろうと楽観していた。

でも現実は違った。

まず、腹が減った。機内食を食べたものの、明日の昼まではもたない。コンビニ的な店は見当たらないし、もちろん営業しているレストランもない。
というか、出国ゲートにはトイレとATMくらいしかなかった。

そして僕らは、ゲートの先に出てしまったのである。

親切なタクシーに乗る

外国に来たのだ。外の空気を吸ってみたいし、どんな感じになっているか見たい。
お腹もすいたし、外に出れば何かあるかもしれない。そんな気持ちでゲートを出た。

そしたら、すぐに一人のタクシー運転手が近寄ってきた。

出待ちしているような輩にホイホイついていくわけないだろ。タクシーに乗ってどこかに行くつもりもない。なにせベトナムのお金がない。

適当に「ノーマネー」というと、「チャイニーズ?ジャパニーズ?」と聞いてきた。こういうのは無視するべきだけど、流れに乗せられて会話してしまった。
お互い、カタコトな英語で頑張った。

運転手「Chinese? Japanese?(中国人?日本人?)」
タク 「ジャパニーズ」
運転手「Do you want to go to Hotel? Restaurant?(ホテルに行きたい?レストラン?)」
僕  「No, thank you(いえ、結構です)」
運転手「Umm, Nothing here(空港には何もないよ)」
タク 「え、寝られるところとかないですか?」
僕  「日本語でわかるわけないだろ」
運転手「I will take you to the city center(中心街まで連れて行ってあげるよ)」
僕  「ノーノー」

その後も歩きながら話しかけられは断り、を繰り返した。

運転手「Very near, very near! City center!(めっちゃ近いよ中心街!)」
僕  「ノーノー、ナッシングマネー」
運転手「You have Ringgit? Baht? Singapore Doll?(リンギット、バーツ、シンガポールドルなら持ってる?)」
タク 「アイハブ シンガポールドル」
運転手「Show me?(見せてみて)」

タクは財布から、事前に日本で両替してあった約260SG$(2万円ちょい)のうち、10SG$(800円)札を渡した。
もっと持ってないの?と言いたげに、クイクイとジェスチャーをしてきた。タクは嫌々、100SG$札も渡した。

僕も(仕方ない…)と思いながら財布を出した。
これはなに?と、1000円札を指してくる。スマホのレート計算アプリを見ながら、OK。といった。タクと僕にシンガポールドルを返し、改めて1000円ずつ要求した。
そしてスマホで「2000YEN = 400,000VND」という画面を見せてきた。

運転手は「この2000円で、中心街まで運んで、しかも30万ドンのお釣りをあげるよ。それでご飯も食べられるし1泊できる。運賃は10万ドン(500円)だけでいいよ」と交渉してきたのだ。

ずっと斜に構えていたが、悪くない。というか、格安運賃な上に現地通貨までくれるなんて、思ったよりもいい人じゃないか!
それにしてもベトナムドン、ハイパーインフレかよ。

駆け引きの結果、僕らは運転手の押しに負け、タクシーに乗ってしまった。まぁ、空港じゃなんにもなさそうだったし、両替してくれたし、いっか。
タクシーにの乗るときにはもう、タクシーっぽくない外装の、無線もカーナビもネームプレートもない車に乗ることに、あまり疑いがなかった。

繁華街で降ろされる

深夜とは言え、ベトナムの大通りはびっくりするほどガランとしていた。街灯以外の明かりはほとんどなく、歩いている人は全くいない。

ベリーニアといったわりに、20分以上走った。
だんだん不安になってきたころに、人がたくさん集まっている賑やかな通りに着いた。車が停まり、運転手が「サンキュー」といった。降りろということらしい。

僕らも「サンキューベリーマッチ」と言い、車を降りた。僕らが降りるや否や、運転手は笑顔のまますぐに車を出した。
降りて周りを見渡して、二人で絶句した。

目の前には、眼帯をしたボロボロの服のおじいさんが、募金箱を抱えて車いすに座っていた。

両足の膝から先がなかった。

道路にはごみが散乱し、落ちた食べ物がコンクリートにこびりついていた。
外国人がバーでワイワイしている。

「え…なにここ…スラム街…?」

想像していたきれいな繁華街とはかけ離れた場所だった。予備知識が全くない状態でどこかわからない場所に放り出された19歳の日本人にとって、精神的ダメージはかなりのものだった。

飲食店、バー、怪しい看板の店…
昼間に来ていれば、きっと楽しい場所だったんだろうな、とも思ったけど、今は深夜。いつひったくりに遭うか、いつ刺されるかも分からない。

僕らは震えながら、サークルKに入った。

商品は見慣れないものばかりで、ベトナム語も全く読めない。ちゃんとしたご飯を食べたかったけど、空港までのタクシー代が足りるか不安だったのもあって、とりあえず安くて安全そうな水と、おっとっとっぽいものを買った。

風俗店のキャッチに追いかけられる

「一刻も早くタクシーを拾って空港に帰ろう。」パニック状態の僕らはそれしか考えていなかった。

オドオドしながら歩いてる日本人顔の若者は、オオカミの群れの中の羊みたいな存在だった。すべての人の視線が怖かった。
流しのタクシーが走っていそうな大通りめがけて、やみくもに歩いた。繁華街から遠ざかり、人気は少なくなる。

歩道を歩いていると、後ろから原付に乗ったオッサンが現れ、僕らの歩くスピードで横付けしてきた。
とっさにヤバい。と思って、タクに「絶対に目合わせるなよ」と言った。

オッサンは「ニーシィショングォーレンマー?」と話しかけてきた。中国人だと思われてるのか?
僕らは無視して歩き続ける。

その後も色々と中国語で話しかけてきたが、やがて諦めたらしく、
次は「ハングッブニセヨ?」「アンニョンハセヨ!」と話し始めた。

韓国語もいけるんかよ!!
恐ろしい。このオッサンは多言語を操って外国人観光客をどこに連れて行くんだろう。
そんなことを考えていたら、とうとう来た。

「ニッポンジン?」

ドキッとした。冷や汗がしたたり、タクとアイコンタクトをしていると、オッサンは(しめた!)という顔で日本語攻めを始めた。

「タノシイ オ店 アルヨ!」

「キモチイ! キモチイ!」

「チン○ンペロペロ! キモチイヨ!」

「オ○パイ! ペロペロ! タノシイ オ店!」

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!
僕らが走り出すと、オッサンは原付のスピードを上げてついてきた。必死に逃げた。

半べそ状態でついに流しのタクシーを発見した。しかも、今度はちゃんとした緑色のタクシーだ。
なんとかオッサンから逃れることが出来た。運転手とは行き先を尋ねられてから到着するまで、一言も会話しなかった。

半泣きで空港に帰る

なんとか無事、空港まで帰ってくることが出来た。運賃は15万ドンくらいだった。残金ギリギリだった。
壮絶で波乱万丈な冒険をしたような気分だったが、ベトナムに来てからまだ2時間も経っていなかった。残り8時間もある。

空港に帰ってきて、ひとまずベンチで反省会をすることにした。
出国してからを振り返ってみた。すべては怪しいタクシーから始まったんじゃないか。

手元に残った38000VND(190円)を見て悲しい気持ちになっていると、タクが「あれ?俺、シンガポールドル、260SG$持ってるはずですよね?」と聞いてきた。

「5万円分両替して二人で分けたから一人260SG$持ってるはずだな。まだ使ってないし」

でもどう見ても、タクの財布には160SG$しかなかった。
(まさか僕の財布に紛れるなんてことないよな…)と思いながら僕も財布を確認した。

あれ…こっちも160SG$しかない…

スラれた。

両替してもらうときにあれほど警戒していたタクシー運転手に、100SG$ずつスラれていた
二人でじっと見ていたのに、いろんな紙幣を見せたり見せられたりしてるうちに、マジックのように高額紙幣が1枚ずつ抜かれていたのか。なんという神業…
タクシーの運転手に二人で20,000円近くふんだくられた。

スラム街に連れて行かされ、しかもお金も盗まれていた自分が情けなくなった。

震えながら夜明けを迎える

もうなにも信じられない…
初めての海外旅行なのに、こんなのって…

出発ロビーの2階はレストランがあって、営業時間外はソファだけ解放されて、そこで寝ている人もちらほらいた。
安全のため、二人一緒に寝ず、片方ずつ見張りをすることにした。見張りをしたのは正解だった。明らかに怪しい男がウロウロしながら無防備に寝ている人を探していた。

水とおっとっとモドキで、なんとか朝を迎えた。

すっきり晴れたが、もう外にでたくはない。空港の無料Wi-Fiを使って二人でアニメを見まくった。飛行機の出発まで、「アマガミ」と「けいおん!」をとことん鑑賞し、現実逃避をした。


ベトナムではなんだかんだあったが、シンガポールでは存分に楽しむことができた。いずれ記事にすると思うけど。
あれ以来、外国のタクシーには気を付けるようになったし、日本でもキャッチには耳を貸さなくなった。うまい話なんて早々転がってないってことだよね。

やっぱり、自分を守れるのは自分しかいない。よい教訓となった。

~後で調べて分かったこと~

僕がタクシーで降ろされた場所は、多分ホーチミン市街の「ブイビエン通り」。
外国人が夜遊びするのに有名な所で、もちろんスラム街ではない(笑)

今となっては適当にバーに入って1杯飲むくらいしたかもしれないけど、当時19歳だし。

あと、僕は物乞いの車いすのおじいさんに会ったけど、ベトナム・インド・カンボジアでは物乞いの子どももよくいるらしい。
詐欺タクシー、車いすのおじいさん、キャッチのオッサンに加えて、物乞いチルドレンに会っていたら、本格的に海外がトラウマになっていたと思う。

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それと、これはベトナムに行った3年くらい後の記事だけど、信じられん!!

とにかく、深夜のトランジットではなるべくホテルに泊まって欲しい。

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